Share

第5話 向こうの世界で

Author: うきぐも
last update publish date: 2026-08-27 15:06:57

とりあえず事件は解決したのでそのまま学校は行った。

そして学食で早めの夕食を摂りながら冷静になって考える。

ふむ……

こっちにもでるんだモンスター……

雑な考察だけど、俺が向こうの世界と行き来することによって特異点になっていて、二つの世界がどうのこうの……に違いない。

もちろんこれからも冒険はするし、その過程で出会ったモンスターは倒す。

そしてあの世界が大好きでプレイヤーをやってた俺が、それを現実で感じられるリアルの異世界生活もやめるわけはない。

むしろ俺のライフワーク。

そうなるとまたこっちにモンスターが出るのかもしれないけど、そのときはまた倒す。

法則がわからないから対策はできないが、俺と出会わない限り向こうのモンスター達は実体化しないのなら、そう被害は出ないだろう(という希望的観測)

もし何か起きたとすればそれはこのルールを作った異世界の女神様のせい……

でもこの先向こうの世界でもっと強力な災害級のモンスターを倒すことになって、それがこっちの世界に出るようなことがあったら……

そのときはどうなるんだろうな……

―――――――――――――――――――――――――――――――――

この時、俺はとても大事なことを忘れていた。

向こうの世界で最初に戦った最強の存在

『カオスドラゴン』のことを。

でもまあ、それはまだ先のお話

―――――――――――――――――――――――――――――――――

向こうの世界で倒したモンスターとこっちに入り込んでくる事象がリンクしているのであれば、この先どこかに『砂漠の皇帝』デューンエンペラーや、一個小隊のオークがやってくるはずである。

学校からの帰り道。

信号待ちで自転車を停止させながらの思考。

もし俺の行動と関連したところに湧くのか?

なら、出そうなのは通学路の国道や、買い物で寄っているスーパー周辺、大学構内……

でも少しずつ進みながら索敵レーダーに意識を集中させるも、検知範囲内にモンスターを示す赤い光は存在していない。

今のところ何か起きそうな様子はないが……。

「ねえ湊(みなと)君じゃない?」

「うわあ!!」

至近距離で背後から声をかけられて俺は思わず飛び退った。

あまりにもレーダーに集中するのはヤバいな。

気をつけよう。

「え、何? 急にゴメン」

振りむいたところに立っていたのは大学の同級生、日枝薫(ひえ かおる)

小柄で眼鏡。綺麗な人だ。同じ学科で成績トップの才女でもある。

「考え事してた時に急に声かけられたからつい」

「なんかすごいキョロキョロしてたからどうしたのかなって。探しもの?」

……なかなか答えにくい。

けど確かに不審な動きだったかもしれないし、ヘタに誤魔化すのも良くなさそうだ。

「探し物というか探し人というか……」

「ふーーん……?」

あまりいい回答ではなかったか。

この人、勉強だけじゃなくてこういうところも妙に鋭いんだよな……

何を探しているかとか、興味を持たれるとかえって面倒なことになりそうだ。

「お邪魔じゃなければ手伝おうか?」

ほらきた。

表情から察するに、今の彼女の胸裏を支配しているのは明らかに親切心ではなく、好奇心である。

彼女と今ここで舌戦を行っても利点は全然ないし、この状況を説明しきるのが無理なこともわかり切っている。

よって返答はそつなく。

「あ、いや、今はいなさそうだから大丈夫」

「ふーーーーん」

何がお気に召さなかったのか……彼女の目がだいぶ鋭くなっている。

俺は日枝さんとプライベートで話をするような仲ではないが、クラスの飲み会のような場所で多少話をしたことはある。

その時の印象としては、頭の回転が速く、場の空気を乱さないよう謙虚にふるまう人であった

なのにだ。

今そこにいる彼女の目は、明らかに俺の嘘を追求しようと何か画策をしているそれ。

一体何がこの人の興味を引いたのか俺には全然わからない。

「じゃあ、また」

彼女の視線を切ってその場を強引に離れようとしたのだが……

「そういやさ」

「な、なんですか」

ま、まだ何かあるのか?

「なんで敬語? ……そういえば今日学校近くの神社に雷落ちたの知ってる?」

あー……。俺の雷魔法か

下手なごまかしで矛盾を突かれると更にややこしくなるので、冷静に答えよう。

「ちょうど俺が学校行くときに落ちたからなんとなくは知ってる」

「そうなんだ。なんか雷落ちたとこにいた人の話だと、その前に隕石みたいなのがあったらしくてさ」

俺やん。

隕石じゃなくて実は人間なんよそれ。

確かに普通に考えたら、巨大落下物も落雷もちょっとした話題にはなりそうな出来事だ。

それが同時期に同じ場所に起きたら噂にもなるか。

「しかもその時は晴れてたのに、雷が落ちるのも不思議だよね」

「そうなんだ。実際に見たわけじゃないから全然知らなかったな」

俺がそう答えた瞬間、彼女はほんのわずかに笑みを浮かべた。

「ふふん。やっぱり何か隠してるな?」

何故だ。何かまずいことでも言ったか?

「え、なんで?」

「まず。なんで?って答えるのは思い当ることがある人なのさ」

「うおっ」

「そしてなぜそこに確信があるかというと……私そこにいたからね」

「えっ」

やばいな。かなり押され気味だ。

確かに周囲の参拝者にはそこまで注意を払わなかったが、そこまで大勢の人がいたわけではないし、日枝さんがいたような記憶はないが……

「君は今、私があの場所にいなかったはずだが…! とか思ってるでしょ。実は私、週末だけあそこの神社でバイトしてる」

なっ!

まさかの参拝客側じゃなく、社務所の中だったか。

「君はあのとき落雷の現場にいた。だから境内の森の中にクレーターがあったのを見ていたはずなのに、なぜかそれは知らないふりをした……」

日枝薫はそこで一旦、言葉を区切る。

その後少しだけ間を空け、こちらに振り向きざまに言い放った。

「つまり自分がそこにいたことを私に悟られまいとした! なんか怪しいよね!」

なんて鋭い人なんだ。

顔は笑っているが、生半可な返答では私の事は誤魔化せないぞと顔に書いてある。

「さあ生半可は返答では私は誤魔化されないぞ」

言ったし。

さあどうする俺。

落雷が実は魔法だとは思いつくわけもないだろうし、モンスターの存在なども一般人が想像できる範疇を超えているだろう。

その関係性を疑われたくなくて、無関係なことを装ったのが裏目に出たか……。

ん?

「ああああああ」

「急に何!?」

突然のできごとに、俺は思わず日枝さんの方を指さし大声を上げた。

正確には、彼女の立っている場所の向こうの光景に対してである。

俺たちは夕暮れ時のスーパーの駐車場で先ほどの会話していたのだが、その店の中にちらっと見えたものがあったのだ。

「やばい。出た」

「何が!??」

オークです。

店の中うろちょろしてます。

「行かねば」

「このタイミングで!??」

俺は背後で叫ぶ彼女を残し、店内に向かって走った

――――――――――――――――――――――――――――――

大学の同級生、日枝薫をその場に放置しスーパーに入ると、そこには買い物客に混ざってオークがわらわらと。

遠めに観察している限り、オークは商品棚の間をまるで木々の間でも潜り抜けるかのようにうろちょろしている。

そして店内にいる人間とはお互い認識もしてないし、物理的にも不干渉ですり抜けているようだ。

だが神社にいた『キンググローブ』は周囲の植物を揺らしていた。

つまり人間以外のものには影響を与えうるはず。

もたもたして店内を破壊しだしたら大変だ。

ざっと(索敵レーダーで)数をカウントした感じ、30体はいそうである。

しかも散らばって移動しているので一網打尽にすることはできない。

魔法が普通に物理現象として効果を発揮することは、今までの経験でわかっている。(燃えたり凍ったり等)

ここで広範囲魔法、ましてや地震や津波、隕石みたいな大掛かりな魔法は使えない。

普通に店が壊れるし、なんなら町が壊れるからな。

ここは範囲睡眠魔法で寝かせて、視覚外から各個撃破だ。

「すいみ……」

「急に走り出すから何事かと」

背後から少し甲高い声が振ってきた。

「うおおおお」

「ええ!?」

動揺して途中で声が出てしまい、睡眠魔法は発動しなかった。

「日枝さん?」

「は、はい」

「後で話すからマジでちょっとだけ外に出てもらってていい?」

「ええっ!? 何それ」

「ちゃんと説明するので」

一瞬思案したようだが、彼女は渋々うなずいた。

そして一瞬だけ鋭い目で振り返ったのち、渋々だが外に出ていってくれる。

……さあ、ここからは速攻だ。

というか、危ないとこだった。

彼女の不意の声かけで一旦冷静になったのは結果的に良かった。

敵対行動をすると実体化するんだから、睡眠魔法も例外ではない。

他の客とか店員さんにバレて、大事になるとこだった

となるととる行動は一つ。モンスターの知覚範囲ぎりぎりから単体魔法で一人ずつ倒すしかない。

……しかも他のやつに絡まれないよう迅速に。

ソーファンには、火・氷・風・土・雷・水・光・闇の八属性がある。

自然エネルギーを使うものだと、少なからず店に被害が出る。

光と闇の魔法は癖が強いが、この状況なら―― 最適解は光。 

一番使い勝手の良さそうなものは、光の力を集めてぶつける『聖球』の魔法だ。

オークの知覚は視覚である。

つまり前に立たなければ知覚されるリスクは少ない。

少しずつ移動しながら知覚範囲ぎりぎりの位置に行き、後ろを向いている敵をターゲッティングする。

そして――

「聖球(ホーリー)」

ドンッ

白く輝く玉が集約し、オークの一体が光となって砕け散った。

下位のオークたちの知能は低い。

うろうろしながら時折商品棚にぶつかり商品を落とす者も出だしている。

同種族の敵を攻撃すると近くにいる敵も一緒に襲ってくる仕様があるが、一撃で倒した場合はその限りではない。

俺は慎重に神聖魔法を放ち続け……。

ようやく最後の一体を光に変えた。

一息ついて、レーダーで敵のいないことを確認して慌てて外に出る。

……日枝薫は腕を組み、しかめ面で待っていてくれた。

10分ほどの時間ではあったが、ちゃんと外で待ってくれたとは律儀である。

「お待たせしました」

俺を見て腕をほどくと腰に手を当て、ズイっとこちらに身を乗り出して言った。

すこし上体を引きながら俺はおそるおそる話し始める

「えーっとどこから話せばいいかな……」

「なんでお宮に行ったのに、行ってないって言ったのか」

やっぱそこからだよな。

別に全部言っていいんだけど、どう考えても信じてもらえっこないし説明が難しいんだよなあ。

細かく説明しても無駄だろうし、いっそ全部言ってしまおう

「日枝さんさ。ソーマファンタジーって知ってる?」

「え? 急に何の話?」

さすがに面食らった表情だ。

だが俺はかまわず話を続ける。

「ゲーマーならだれでも知ってる有名なオンラインゲームなんだけどね」

「知識としては知ってる。10年以上も前から続いてて、今なおたくさんのファンがいる、多人数同時参加型オンラインRPG」

「へえ。知識として知ってるだけでも意外だった」

「あらそう? 勉強ばっかりやってるイメージだった?」

彼女は皮肉っぽく笑い声をあげる。

「いやまあそうでもないけど、ゲームに詳しいイメージはなかった」

「そう。それで、そのソーファンがどうしたの?」

いまソーファンって言ったよな?

が、その思考はすぐに遮られ、俺は1つ忘れてたことを鮮烈に思い出した。

今、突如目の前に現れた光景によって。

日枝さんの背後にぼんやりと揺らめくような闇が浮かび上がり、そこに

「”全身皮剥狂” ザクトズルト……」

そいつは俺の正面に立っている日枝さんの背後に忽然と現れた。

しかも実体化した状態で。

そう。知覚範囲内で正面に俺がいるためだろう

さすがにやばい。

背中にかすかに冷たいものを感じる。

……俺は右手の二本の指を静かに伸ばして、ザクトズルトを指定した。

「え、なに。なにその動き!」

「ゴァァアアア!!」

「デス!(即死魔法)」

敵の唸り声で彼女が振り返るのと、俺の魔法が発動するのは同時だった。

一瞬にして闇に包まれ、そして光となって消えていくオーク。

そしてその光景を目を見開き、その光景を見つめていた彼女。

「な……今の……な、に…?」

「話せば長くなるんですが……」

さすがに言葉に詰まってぼそぼそと呟く彼女と、真顔のまま立ち尽くす俺。

しかしその次に彼女が発した単語は、俺には意外なものだった。

「オーク……?」

「えっ」

彼女の口から出た言葉に俺は耳を疑う。

そういえばさっきソーマファンタジーのことソーファンて略したしな?

俺のこわばった表情を見て、日枝薫はやや表情を崩してから呟いた。

「実は私、ソーファンプレイヤーだったりするんだ」

Continue to read this book for free
Scan code to download App

Latest chapter

  • 現実と異世界を往復したら無敵になりましたが謙虚です   エピローグ

    俺はむくっと起き上がったそこはマリチの家の庭「元凶になったドラゴンを倒したのに……なんで私たちはまた異世界なんだろうね」ぶっ倒れていた俺の横に座っていた日枝薫が少し不思議そうに呟いた「……」―――俺が望んだからだ。まだこの世界の探索は始まったばかりだしやらなきゃいけないクエストもイベントもいっぱい残っているからな!「みんなどうやってここに?」素朴な疑問だ「私は家で勉強してたら部屋に扉が出たから。そこから入った」妹の曜ヒカリがとんでもないことを言った「湊くんとマリチさんが消えた後、あそこに扉が出たので」なるほど俺たちが飛ばされた後の話か「私は女神さまに会ったよ」マリチは腕を腰に当て、ふんぞり返りながら言った確かにあの時マリチも一緒に飛ばされていったからな……「あ、そうなんだ。なんて言ってた?」マリチは少し空を見上げながら考え込む「あんまり覚えてないな……お礼を言われた気はするけど」「そうなのか」「あ、でも。マリチにも扉、見えるようになりました」『えっ』衝撃の発言に、俺と日枝さんと曜がそろって声を上げる「てことで、これからはそっちにも遊びに行こうかなと」それとんでもないことになるやんこのお気楽な最強女子を俺たちの現実世界は受け止められるんか?「じゃあ私もまた冒険しに来ようかな」曜はえへへと笑いながら言った俺にとってはライフワークなのに、へらへらしながら言ってるんじゃないよ「それよりさ」マリチがニヤリと笑った「そろそろ深海の悪魔が湧くころだよ。行くよね?」『深海の悪魔』それは魔の海域と呼ばれる場所にひっそりとある海底洞窟に

  • 現実と異世界を往復したら無敵になりましたが謙虚です   最終話 ずっと友だった君へ

    「無明拳。からのもっかい無明拳」ガン!……ガン!!必殺拳を二連続で命中させることにより、連携空間「極光」が発生する。俺はそこにすかさず聖球の魔法をぶちこむ。龍の頭部が大きく後ろに揺らめき、側頭部の結晶がはじけ飛ぶ。が、大きくのけぞった頭部は再び遠心力をつけて攻撃してくる。口を大きく開いて噛みついてくるのを、すかさず割り込んだ俺が受ける。マリチはそれを当然のことのように感じているのか、感謝をすることもない。 そもそも最初から回避をする気もないようだ。龍は相変わらずレーザーを撃ってくる。たまにマリチをかすめることもあるが、武術家の膨大なHPで致命傷には至らない。しっぽや噛みつきといった特大物理攻撃に関しては、俺が先読みして受ける。「無限・羅刹衝」マリチの両手から放つ衝撃波が、龍の腹部を大きくへこませた。その衝撃で最後まで残っていた星核結晶に大きなひびが入り、バラバラと剥がれ落ちる「ああ……やっぱり蛇だったんだなあ」虹色の結晶核をすべて剥ぎ取られた龍は、もはや『龍』とは呼べない。翼は捥がれ、たくさんの角のように伸びていた結晶は全部砕かれ、全身は光沢のある白い鱗でおおわれている。かろうじて残っている小さな四肢が、蛇をまだ龍だと言わしめる。「極大雷撃槍」マリチが腕を振り上げて、巨大な雷魔法の槍を放った。バリバリバリバリ……!!だが電撃は龍に当たるか当たらないかのところで、虹色の障壁に阻まれる。「結晶の鎧がなくとも、そもそも星核の力を吸い取ってるから魔法は効かないか」俺は冷静に敵の動きを見ながら、何が効いて何が効かないかを観察していく。 (決して横で解説してくる謎のおじさんになっているわけではない)が、そんなことは一向にお構いなしの奴がここにいる。「連続流星群」マリチが両手を大きく広げ、その手をまっすぐ上にあげる。と、同時に龍の上空に無数の魔法陣が現れて巨大な隕石が落ちてくる。それを防ぐべく、龍の身体に無数に現れた防御障壁の輝きで、辺りはまるで昼のように輝く。だがマリチの攻撃はとどまることがない。「漆黒の闇を統べし者、我が求めに応じ疾くきたれ。いでよ冥王」素早く両手を回して魔法陣を生みだすと、そこから黒い巨大な人型の深い闇が現れる。「世界を律する滅びの鳴動。審判!!」イバラの様に伸びる無数の黒い稲妻が、アメノ

  • 現実と異世界を往復したら無敵になりましたが謙虚です   第21話 淡い光の道を

    淡い光の道を駆け抜けたその直後。……夜か。辺りは闇に包まれていた。眼がまだ慣れていないためほとんど何も見えないが、ここがどこかは予想がつく。転移魔法は一度行ったことのある場所しか行けない。龍が現世でゆかりのある場所は、あの奥宮しかないはずだ。 ……だが妙だ。静かすぎる。あんな巨体、境内に隠れる場所などほとんどないはず。さらに言えば黒竜が現れた際に、ほとんどの木が吹き飛んでいる。何処にいても剥き出しになるはずだ……いくら夜の闇の中だとは言え、まったく見えないということは……。ここではない別の場所に現れているのか……?俺は戸惑いの中、一瞬だけ後ろを振り返ってみた。遠くには町の小さな光が綺麗に見えている。やはりここはあの奥宮のあった高台。そして扉がつながったということは……はっと気が付いた。――暗すぎる。昨日はちゃんと月が出ていた。今日の月齢こそ正確にはわからないが、満月に近い頃合いだったはずなのにこの闇の深さ。俺は本来あるべき月を見上げた。 やはり―――そこにいたか。異世界と現実世界を結ぶ、伝説のモンスターただ……その姿は――「カオスドラゴンになっとる……」先ほどまでの星の核の上で戦っていた時は、長い身体をくゆらせる蛇体だった。今はそこにドラゴンの様な翼膜を備えた巨大な翼を持っている。もしかして単純に、飛ぶ必要がない時は収納可能だった?元々ソーファン世界で戦った時は無駄にホバリングしていた。ゲームだとバトルフィールドは閉鎖空間なので、その飛行能力に意味はなかったが、ここは何でもありの現実世界。大型モンスターの飛行移動は、被害の桁を変えてしまう。「マズいぞ……」小さな蛇神様だったときのアメノミカヅチがどういう神さまで、どういう経緯でここに祀られていたのかは分からない。だが無理やり召喚されて、暴走するほどのエネルギーを与えられ、モンスターに成った状態で、ここに戻ってきたのだ。女神さまの意思でもあり、異世界の精霊たちの意思でもある。二つの世界のバランスを取る者(自称)として……大変申し訳ないのだが、龍の神さまにはもう一度お鎮まりいただく!って……俺が負けたら、この龍で世界が滅びるかもしれないな……あ、でもそうなったら次は別の世界からたくさんの勇者たちがやってきて アメノミカヅチを倒すという第

  • 現実と異世界を往復したら無敵になりましたが謙虚です   第20話 戦いは始まる

    戦いは始まった。巨大な水の槍は龍の輝く鱗をバキバキと砕きながら突き進む。しかし圧力は少しずつ弱まり、やがて水飛沫へと形を変えて消えていく。全ての水が飛び散り霧散しても、龍の硬質のたてがみを破壊しきれてはいない。周囲の星核結晶と同じ淡く発光していた龍の身体。 しかし、ゆっくりと動き始めると同時にその光が消える。……充電を途中でやめた。みたいな状態?鎌首を持ち上げるように上体を起こすと、龍の胴体は硬質の結晶同士が擦れあう轟音を立てながらこちらに這い寄ってきた。俺はまだ敵との距離がある間に、カオスドラゴンを『調べる』《星龍 アメノミカヅチ》『その強さは計り知れない』と表示されている。ステータスや体力ゲージなどはどこにも見えない。……今のでどれくらいダメージを与えたのかも分からないな。時間制限のある絶対防御を最初から使ってしまうのはマズい。相手の攻撃の威力が判断できないし、長期戦の戦略が組みにくくなる。「俺がダメージをもらった時の回復は任せる!」龍から距離を取って下がっている日枝さんに、俺は合図を出しておく。「わかった!」俺は威嚇のための閃光魔法を放った。そこか。とでも言うように、龍がこちらを向く。その動きは龍ではない。蛇だ。というか、この龍は……蛇なのだ。異世界にて強大に成長したことで龍に成ったのだ。アメノ(天に棲まう)ミカ(門を制する)ツチ(蛇)なのだ。何処にあるかもよく分からなかった口が、裂けるように横に開いた。……その姿も蛇をほうふつとさせるヴァハッ無数の小さな何かを飛ばしてくるその動きは、さながら毒を吐きかけるが如く。高速で飛んでくるその何かを、俺は身幅の広い両手剣で受け止める。「結晶の欠片か…!」 それは細かく砕かれたような無数の結晶の破片だ。全てが尖った鋭利な構造をしており、刺さると厄介そうである。この巨大な敵と戦うのに、小細工は必要ないだろう。俺は剣を振りかぶると、思い切りよく胴体に切りつけた。ガギッ!!うん。まあ、めちゃくちゃ堅いが、一応ダメージは入るな。「無双連斬」25回攻撃。ドガガガガガガガガガガッガガッガッガが、モーションが長すぎる。途中で巨大な尾による薙ぎ払い攻撃が飛んできた。攻撃をキャンセルして剣で受ける。ドガッッ身体が浮かされ、100メートルぐらい飛ばされた

  • 現実と異世界を往復したら無敵になりましたが謙虚です   第19話 どこにいる?

    「で、どこにいるの? カオスドラゴン……その……アメノミカヅチ様は」「それなんだよな……」ソーファン世界で戦ったカオスドラゴンは、星の核に寄生していた。 戦いは謎の異空間みたいなところで行われていたが、あれはどこなのか。通常の方法でその場所には行けないだろうから、こちらから挑むことができない。ソーファン世界のモンスターは俺たちを感知してから実体化していたが、それはおそらくこちらの世界とのつながりが弱かったからなのだろうだがカオスドラゴンは元々こちらの存在……。もしこっち側に出たら、最初から実体化してるのではないか?「元々ここでお鎮まり頂いていたのなら、実は良い神さまだったりしない?」俺の不穏な予測とは裏腹に、日枝薫が素朴な疑問を口にした。が、それはないんじゃないかな……。何故なら、暴走して魔獣と化したからこそ討伐イベントが発生したのだ。そしてそもそもに俺が異世界に行くことになったのも、倒さなければならない存在だと判断されたからだろう「暴走したソイツと戦ったのが事の始まりだからなあ……」「ダメかぁ」やはり被害を最小限にするにはまだ活動を始めていない今、倒すしかない。「なんとかしてこっちから行くしかないな」「やっぱりそうなるか……」いままで扉が出たり出なかったりする条件がいまいちわからなかったが、今ならなんとなくわかる扉はおそらく必要に応じて出してくれてたんだろう。全ては『龍』を倒すことにつながるように。「じゃあ行ってくる」俺は魔導書を出し、転移魔法を唱え始めたガシッ魔導書を持っている手首を掴まれた「私を置いていくつもり?」詠唱は一瞬にして完成してしまっている。日枝薫の表情を確認する間もなく、転移空間は俺たち二人を飲み込んだ ブオォォン腕を掴まれたまま俺たちが出てきたのは、アパートの風呂場。すなわち光る『扉』の前だ。 なにかを訴えかけるように、いつもより輝きが強い気がする。「行けってことだよね」電気がついていない夕暮れ時の風呂場である。薄暗い室内でなお、日枝薫の目は輝いている。「いや、俺だけで行くよ」強すぎる敵である。 以前戦った時にわかったが、レベルマックスの俺たちと対等のモンスターだった。まだ装備やレベルがマックスではない日枝さんが戦うのは危険だ。「君の言いたいことはわかる。でも支援ぐらい

  • 現実と異世界を往復したら無敵になりましたが謙虚です   第18話 町の図書館

    大学の図書館にめぼしい発見はなく、街の図書館にて見つけた情報。ようやくそれらしい記述を見つけたかもしれない。俺はバリバリに理系で、こういうジャンルの専門家でもない。……だからこれはあくまでも想像の域を出ない。 記紀(古事記・日本書紀)には載っていない古い郷土史、風土記の記述。いわゆる地元以外では知られない、小さなお社などの看板等でしか見ない物語。そこに登場しているお宮の名前は『神戸(カミド)神社』主祭神はふつうに天照大御神、と、地元の氏神様。 けどそのお宮の隅っこに摂社として小さな祠がある。そこに祀られている『門蛇大明神』とやらの御祭神が。『天之御門蛇(アメノミカヅチ)』 または 『天石門別蛟(アメノイワトワケノミズチ)』という謎の存在。これは有名な天岩戸伝説に関わっているらしい。 いわゆる、天照大御神が天岩屋に隠れたという有名な物語だ。御門というのはその時に洞窟をふさいだ岩の事。門の神さまである。岩の洞窟の入口を岩で防いだら普通、隙間が結構できる。自然石と自然石なのでピッタリ合わさることにはならないからだ。しかし岩戸は結界となり外界とは隔絶される。その岩戸にできる、ほんの小さな隙間を通り抜け、出入りできるモノが居た。岩戸隠れした際に隙間から出入りし、天照大神の話し相手になっていたのがこの……『アメノミカヅチ』という、神というか……蛇の妖怪だ。この物ノ怪は、岩戸の隙間を何度も出入りしていた。 つまり、結界をくぐり抜ける力を持っていたと考えられる。それこそが門を越える力……。現実世界と異世界の次元を飛び越えられる力?ソーマファンタジーという異世界において、一万年前にあった星核の暴走の際。そのエネルギーを喰わせるために元になった、神獣と呼ばれるモノの正体。 これかも……。人智を越えている。 だが、筋は通る。次元を超える力を持っていた存在だったからこそ、異世界から何らかの方法で召喚されたのかもしれない。だが……もしそうだとすると、カオスドラゴン……アメノミカヅチは、いつかこちらに還ってくるのだ。俺と同じように異世界の力を手にして。何故最初のきっかけがカオスドラゴン討伐だったのか。この町に住んでいた俺が代表として選ばれて異世界に行ったのか。全ては繋がっていたに違いない。俺である必要がない気も少しする

More Chapters
Explore and read good novels for free
Free access to a vast number of good novels on GoodNovel app. Download the books you like and read anywhere & anytime.
Read books for free on the app
SCAN CODE TO READ ON APP
DMCA.com Protection Status